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「人のためになる人ならない人」
人のためになる人ならない人

−内容紹介−
人の持つ力を引き出し、思い切り発揮させる能力こそが、今求められている。その能力、”コーチ力”の重要性を示し、優れたスポーツコーチの生き方、考え方から、その方法と秘訣を解き明かす。

辻 秀一(つじ しゅういち)
スポーツドクター。障害者からプロ・オリンピック選手まで、さまざまな競技の選手の「心」と「体」をサポート。スポーツ医学やスポーツ心理学を基に、企業や教育機関においても必要な「コーチ力」について講演やセミナーを行う。著書に『スラムダンク勝利学』ほか多数。


● 「あなたは人のためになっているか」と問われると、ちょっとどきっとしますね。ずばり、どういう人が人のためになる人なんでしょうか?
ここでわたしが言う「人のためになる」というのは、ボランティアや自分を犠牲にして何かをする、というようなことではないんです。

● では、どういうことですか?
オリンピック選手とコーチを例に考えてみましょう。例えばモーグルの里谷多英選手。
彼女はオリンピックなんていう大舞台で2度もメダルを獲得しましたよね。彼女にそれだけの実力があったのはもちろんですが、それを本番で発揮できたからこそメダルを獲れたわけです。
昔、日本人選手はプレッシャーに弱いと言われていましたが、彼女はそれをはねのけて立派な成績を残しました。そこには優秀なコーチの存在があるんです。

● たしかずっと外国人のコーチがついていますね。
そう。このコーチは、ボランティアでもないし、自分を犠牲にしているわけでもありませんよね?
コーチとして、里谷選手の力を伸ばして、その実力をオリンピックという本番で発揮させて、メダル獲得に導いたんです。そしてそれは、里谷選手だけでなく、コーチ自身の喜びにもなるし、この場合、日本全国を喜ばせることになりました。
こういうことを、この本では「人のためになる」と言っているんです。

● なるほど。それは相手にとっても自分にとってもいい結果を生むということですね。
そうです。
ただ、注意したいのは、「結果主義」ではないということ。たとえば、またスポーツの例になりますが、明日の試合に勝つためにだけ選手を鍛えたとしましょう。そのあと無理がたたって体を壊したりしたら、試合に勝った瞬間はうれしいかもしれませんけど、それはけっしてその選手にとっても、まわりにとっても幸せなことじゃありませんよね。

はじめから結果だけを求めるのではなくて、まずは能力を伸ばしつつ、それを競技や試合という本番できちんと発揮するための力をつける。そしてそのプロセスを大切にすれば、本人も、まわりもハッピーになれるし、結局のところ結果だってついてきます。いわば「経過主義」ですね。

● それはスポーツだけではなくて、ほかのシーンでも応用がききそうですね?
もちろんです。スポーツの試合というのは、ライバルもいれば、ときには誤審だってあるわけです。まさに社会の縮図ですからね。職場や学校、家庭、といった場面でもまったく同じことなんです。

● では、この本はどちらかというと指導する立場の人むけなんですね? 教師や親、コーチや上司とか…。
いちばん読んでいただきたいのは、そういう方たちです。でも、選手や部下といった人たちにとっても、「自分のため」になる内容なんですよ。
さきほどから何度も言ってきた「自分の能力を発揮できる力」のことを、「社会力」というのですが、その「社会力」をつけてあげられる力のことを「コーチ力」と呼んでいます。この「コーチ力」を身につければ、自分自身を高めることもできますからね。

● その「コーチ力」を身につけるには、具体的にどのようにすればいいんでしょう?
ひとくちに「コーチ力」といっても、そこには必要な要素がいろいろあるんです。たとえばコミュニケーションをきちんととって、相手を理解すること。見通す力を持つこと、自己愛の幅を広げること…。5つずつ4パターン、合計20のキーワードで説明できるんですが。あとはこの本に詳しく書いてありますよ。(笑)


大学のバスケットボールチームにカウンセリング中の著者

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