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新宿情話
新宿情話

須田慎太郎 写真・文
定価:2,400円(本体価格)+税
ISBN:4-901784-24-2
A5判ソフトカバー 512ページ(写真約130ページ)

吹きよせられる男と女・・・。
現世のさまざまな夢や欲望、喜び、哀しみをのみこんで、今日も息衝く魔都・新宿。
金と暴力、人情が交錯する混沌の街に生きる人々の、七色に紡がれる人生模様。
気鋭のフォトジャーナリストが写しとった、渾身の人間ルポルタージュ。

〜目次から〜
【風俗というエアーポケット】
■ 舞
歌舞伎町『ピカソ』キャバクラ嬢 二十一歳
「男の人が近くにいてくれないと寂しい。それは、いまの彼じゃなくてもいいのかもしれない。友達でもいいかも。ちょっと"コドナ"かな?ハハハハッ」
■ 弥生
歌舞伎町『バスパブニューヨーク』セクパブ嬢 二十四歳
「泣くヒマもないくらい、イヤだなんて言えないうちに、次から次にお客さんの上に乗っかって、オッパイ揉まれて腰突き上げられて、なんかマワされてたっていうか…」
■ あいか
イメージクラブ『レースクィーンファクトリー』オーナー 二十五歳
「新宿は宝箱みたいな不思議な街ですよね。男の人の遊園地。だからわたしは、男の人が楽しめる華やかな場所を造りたい」
■ 千堂あやか
ストリッパー 二十九歳
「結婚して寿引退するのが夢だったんです。子供が好き、子供が欲しい。親にすごく心配かけてきたんで、安心させたいから…」
■ 池子マリヤ
オカマクラブ『マザーテレサ』ママ 四十五歳
「結局、オカマは結婚できないから孤独…。それにおつき合いだって一生つづくかどうか。男は浮気性だから…」

【ニッポンに暮らすそれぞれの理由】
■ 金 益根
ホルモン焼き『幸永』社長 六十二歳
「人間は生まれた国で生きていくべきだと思うのね。ハンデがあるでしょ、言葉や文字がわからないっていう以上の。だからね、人間は心だよ。商売もそう。心あって商売したら負けない」
■ エン ソウ
『百人町屋台村』社長 三十三歳
「お客さんには、その国に行かなくてもここで食べられるように、アジア各国の美味しい料理を作ってあげたい」
■ セナ チェリク
トルコ屋台『ドネル・ケバブ』経営 三十七歳
「自分の生活だけでなく、祖国の家族に仕送りするためにも仕事をしなければならない。それに、日本にいるクルド難民の才能に見合った働く場を作らなければいけない」
■ ラハマン エニー
ショットバー『ブルー・ガーデン』経営 二十七歳
「店では毎日いいことがあるよ。これからもひとりぼっちで来ても楽しい店、友達ができるような店、そんな店を作っていきたいです」
■ 朱 麗
デートクラブ嬢 三十二歳
「結婚しようって言われたことは何回もあります。多すぎるほどです。本当か冗談かわからないけど。でも、確認しようと思ったことや、お客を好きになって心が動いたことは一度もない」

〜〜〜サラリーマン人生それぞれの処し方〜〜〜
【新宿を見つめる生き証人】
■ 林 岱山
『新宿スカラ座』社長 五十六歳
「閉店の話を聞きつけて店を丸ごと売ってくれって。でもね、私の手を離れたスカラ座、その建物が残るのはイヤなんだ…」
■ まやま(本名・杉田光隆)
寄席『末広亭』専務 五十二歳
「末広亭はもう何年ももたない、売らざるをえないだろうって言われました。ただやっぱりね、笑いって大切なんです」
■ 中西鈴子
『新宿十二社天然温泉』女将 七十八歳
「経営のことだけ考えたらやめちゃいたいけどね、温泉療法で麻痺した体がよくなったなんて聞くと、ああ、よかったって思いますものね」
■ 斉藤昭隆
思い出横丁『つるかめ食堂』社長 七十五歳
■ 三堀 功
『バーみのる』店長 六十歳
「三十年くらい前だったかな、おかっぱ頭の小さい女の子がね『タマゴヤキちょうだい…』って言うのよ。次の朝も食べるものがないっていうのをあるお客さんが聞いてさ、私におにぎり作らせてね。この横丁は"人情横丁"ですよ」(斉藤昭隆)
■ マレンコフ
ゴールデン街 流しのギター弾き 七十八歳
■ 奥山彰彦
『奥亭』オーナー 五十五歳
■ 永井教子・山本弛帆
『クリシュナ』共同経営者 二十八&二十七歳
■ 水戸部房乃
『美紗』ママ 八十七歳
「通行人みたいな顔して、どっか飲み連れてって、なんていうのがいたらキャッチよ。でもね、このコたちもこれで食べてるんだなと思うと可哀想になってね、手伝ってやるような気持ちにもなるのよ」(水戸部房乃)

【稼業としてこの街を選んだ男たち】
■ 徐在明(日本名・内山三郎)
実業家 七十五歳
「頼れるのは自分のカンだけだ。男の真価は落ちた時にどうするか。どん底に落ちてもはいあがれるだけの根性をもて!」
■ 柏木 崇
デジタルフォトスタジオ『Pix-Do!』社長 五十三歳
「寂しいんでしょうね、彼女たちは。怒ってくれる人もいない、風俗を辞めろって言ってくれる人もいない。気がついたら、歌舞伎町のコたちの相談役でしたよ」
■ 愛田 武
ホストクラブ『愛』社長 六十三歳
「男も女も愛を求めてるのね、愛して愛されて。ですからね、愛が…愛なんですよ」
■ シバちゃんとフーちゃん
バー『シオン』共同経営者 六十歳&五十五歳
「この頃考えるんですけど、ボクがいなくなったらフーちゃんどうやって生きていくんだろう、幸せでいられるかなって」「あたしは、いま幸せ。シバちゃんといっしょにいてひとりぼっちじゃないから…」
■ 石川優作
スカウトマン 二十八歳
「ボクはこの街に育ててもらった。人間の汚いところが透けて見えるどころか剥き出しの街。でもそういった中でこそ夢をつかめる人間もいるんです。僕にとってはこの新宿が大学だったんです」

〜〜〜歌舞伎町に戯れる女子中高生たちの夢〜〜〜
【彷徨える人々の風景】
■ 石橋恵子
芸能プロダクション経営 四十二歳
「風俗デビューがノーパン喫茶。十六歳の時に十八歳です、高校中退ですって言って…。日本女子大付属高校在籍の風俗嬢なんていませんわ、そんなの」
■ 堀川健作
裏ビデオ店店員 四十歳
「逮捕されるかどうか、私は運だめしをしているようなもんです。何年も捕まらずに運よく稼いでいる人もいますからね」
■ 津田政明
ホームレス自立支援組織ボランティア 四十八歳
「何かの役に立ちたい、誰かのためになりたい、働いて立ち直りたいって人は多いんですよ。おっちゃんたちが、慣れない手つきでね、こう、背中を丸めて地べたにくっついたガムを剥がしてるの、無言でね。オレ感動して泣きそうになったよ」
■ 河辺雅夫
路上本屋 六十歳
「サウナに住んでるようなもんだよ。ひとっ風呂浴びて、焼き魚定食でビール一本飲んで、一時に寝るの。朝は五時に起きてサウナ入って、また焼き魚定食」
■ 瓜田純士
ヤクザ 二十三歳
「命狙われようが、さらわれようが、お茶飲んじゃワリィか、オレの地元じゃねぇかって胸張って、一生、ここで生きてきますよ」


著者プロフィール: 81年『フォーカス』創刊時からスタッフカメラマンとして携わり、"ロス疑惑・一美さん意識不明の病床写真"など数々の衝撃的なスクープを放つ。その功績により、若干29歳にして「日本写真協会新人賞」を受賞。一貫して人間ドラマを追う。作品集に『鯨を捕る』『スキャンダラス報道の時代―80年代』、世界40カ国以上の人間の生き様を描いた『人間とは何か』など多数。1957年、千葉県生まれ。



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