山へ向かい、山を拓く―。
日本の「近代登山」を創った3人の男たち
生涯を上高地で暮らした山の案内人・上條嘉門次
日本アルプスに魅せられた登山家・ウェストン
穂高初登頂。地図の測量師・館潔彦
たった一度の邂逅とそれぞれの人生。
文明の地、イギリスから極東の小さな島国へとやって来たウォルター・ウェストン。宣教師としてキリスト教を広める一方、自らの趣味でもあった登山を通し、日本に近代登山を根づかせる役目を担っていた。
近代地図作成を目的として、道なき道を歩きつづけた館潔彦。いまの私たちが目にすることのできる五万分の一の地図は彼ら明治期の測量師たちの業績の賜物である。
そして、この二人の水先案内人として、まるで影法師のように付き随った上條嘉門次。いまも上高地に建つ山小屋、嘉門次小屋は彼の曾孫によって営まれている。
あたかも日本の近世と近代との糊しろを歩むようにして、三人は出会い、すれ違う。
――「プロローグ 邂逅 明治二十六年八月」より |