壊れてしまうから、儚いからこそ、何百年も愛でられてきた――。
やきものは男の美学なり。
大ヒット漫画『へうげもの』の古田織部の生きた時代、武士や数寄者たちは、茶にのめりこみ、やきものに心酔した。
中国からわたってきたて天目茶碗は、真っ黒いなかに油の滴のような七色の釉薬が仄見えて、まるで満天に輝く星のよう。宝石のような美しさに見とれた。
戦の前、戦国の武将たちは、朝鮮半島からわたってきて井戸茶碗に点てられた茶をまわしのみ、共に戦い生き抜くことを誓った。
ただの観賞のためではない、もっと切実ななにかが、「やきもの」だったのだ。
そんな中国や朝鮮半島からわたってきたやきものに近づこうと、日本でも、たくさんのやきものが誕生したが、明治になると機械化が進み、日本のやきものは壊滅的な状態に。それらを復興させたのは、魯山人や荒川豊蔵らたち。彼らは桃山時代などに焼かれた器を参考に、廃れていた技術を蘇らすことに成功した。日本のやきものは、いったん途絶えた後、昭和の初めに再興されたのだ。
本書では、昭和の名工たちが手本とした伝世の古陶と、それらを範にした昭和の名品、さらには現代のものをあわせて紹介しながら、一本の糸のように受け継がれてきた日本の工芸技術の粋を披露する。 |