オランダ版、私小説の傑作。
ヨーロッパで記録的な大ベストセラー。
パリ、ロンドン、ミラノなどとならんで、ヨーロッパの流行の発信都市、アムステルダム。主人公は、そのアムステルダムに暮らす勝ち組夫婦。夫婦そろって、会社を経営、仕事も家庭も順調。妻のカルメンは美人でスタイルがいい。男たちの視線は彼女の形のいい胸にいつも釘づけ。しかしスタインは極端な貞節恐怖症。一夫一婦制の(性)生活に対する病的恐怖心をもっていて、金曜日には女性をさがしにカフェへ繰り出す。
人生を謳歌していた二人だが、カルメンの自慢の胸に異変が。検査の結果、かなり進行した乳がんだった。抗がん剤治療、乳房切除、そして再発……。そんな出口のない二人だが、彼らはなんとか前に進もうとする。そして、相も変わらず続く、スタインの悪い癖。
深刻なはずのこの物語は、アムスのおしゃれな風俗、ブランド品、夏のバカンスなどに彩れられながら、軽い文体でつづられていく。カルメンは最後、尊厳死を選択し、人生の最後を自分で演出する。若くしてがんになることは、ただ不幸で不運とは描かれない。自分の生も死もあるがままに受け入れる――スタインとカルメンとその家族と友人のなんでもありの、まったく新しい物語なのである。
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