吉兆が育んできた料理の「知恵」を家庭にお届けします。
春の旬材、どうしたら、おいしく、健康にいただけるのか。
舌で考え、技を磨く、そんなヒントを集成しました。
京都、嵐山吉兆の料理長、徳岡邦夫のはじめての料理本である。
彼は、いま日本のみならず、世界的にも注目を集める料理人である。
彼はいろいろな意味で革新的だ。伝統的な料亭料理にさまざまな斬新な手法や食材を迷いなく使うこと。閉ざされた料亭の門戸をどんどん開いていこうとしていること。
今度の本もその革新の一環である。料亭の技と味をおしげもなく、家庭料理としてアレンジし、多くの人に公開してしまおうとしているのだ。
使っている食材、調味料にはじまり、味付けや盛り方のコツを披露しているのは、いうまでもない。多くの料理本との違いは、手順にしっかりとした意味付けをしているところ。たとえば、野菜の下茹ではなぜ必要なのか。魚の霜ふりは何のためなのか。意味がわかることで、私たちはひとつひとつの作業をおろそかにしたくなくなる。
おいしさには幅があるから、家族のひとりひとりの好みを互いが知って、少しずつ各々の家庭の味をつくっていく。それが徳岡が考える料理の基本だ。その手助けをするのが本書なのである。料理は食卓から生まれるコミュニケーションによって鍛えられる。そこから、家族のつながりとか、新たな食文化が生まれてくる。
「私はどんな料理でも、決めの味はないと思っているのです。常に適応させていく。家庭でも少しずつ工夫をして、その家の味を、その時の味を、作っていってほしいと思っています」本文より |